竹島水族館
【お金なし、知名度なし、人気生物なし 三重苦の弱小水族館に大行列ができるワケ】
竹島水族館(愛知県蒲郡市)の記事がとてもとてもためになります。
過去には「税金のムダづかい」として閉鎖寸前だった小さな水族館。
しかし今では行列ができるほどの人気ぶり。
閉鎖寸前の8年前は年間12万人だったのに、今や40万人を見込める規模に。
規模の小ささや条件面を考えると、中小企業がそのまま参考にできることがもりだくさんなのです。
好きな仕事って?
人気がなかったころのマインドの特徴が、厳しく言えば自己中心的。
というか、業界的にそういうものでしょうね。
「水族館の人たちは魚が好き過ぎるのです。魚をうまく飼育して増やして、給料がもらえればそれで満足。お客さんに楽しんでもらうという意識がありません」
ペットショップならまだしも、確かに集客とか考える必要なさそうなイメージです。
【好き】なことは大切なことですが、それだけじゃ成り立たないという現実はよくある話ですね。
お客さん目線のPOP
今の館長さんがぺーぺーのころにやってみたのが、POP。
よくある難しい説明文ではなく、来場者が興味をもつようなPOP。
しかし当時はすぐに受け入れられるわけではなかったんですね。
「魚の飼育と研究を突き詰めている人たちからしたら恥ずかしいような内容だったのでしょう。翌日に出勤すると、全て剥がされて事務所の机の上に置いてあったこともあります。先輩たちからは、『そんなことよりもまずは魚の飼育を覚えろ』と言われました」
あぁ、ワクワク系でよくある話みたいな状況。
ちなみにこの部分にあるプロダクトアウト。
プロダクトアウトを志向する中で、新入社員だけが「顧客第一」
言ってみれば自分たちを優先という考え方です。
※悪いわけではなく、高度成長期には鉄板の思考
どや!と製品やサービスをつくってから、誰に売ろうか?どうやって売ろうか?って考えることですね。
対義語は「マーケットイン」です。 お客さん(市場)が喜ぶことを探してから、商品やサービスをつくることです。
この水族館の場合だと、図鑑の専門的だった。 でも来場するお客さんが興味を持つようなPOPにしたということですね。
ただ、新入りが思いだけで勝手なことをやるのがいいことでもなく、ここらへんの調整が組織としての難しさでもありますよね。
やりたくない仕事もやる
経営悪化で先輩たちが退社。その結果、主任に。
非難するわけじゃありませんが、どんな言葉で語ってもその状況になったら行動になってしまいます。
そりゃ条件が悪くなれば、仕事をやめる先輩も責められません。
ただ残る人は残る。
結局は腹をくくってやる気があるかどうか?だったんでしょうね。
そして「さわりんぷーる」という、深海魚に触れるタッチングプールのコーナーをつくったんですね。
これも本心ではやりたくない。 少なからず生体に負担がかかるだろうから、悩むはず。
でも竹島水族館には、深海魚が豊富で他の水族館にはない強みがある。
その強みを生かして、実施したのが大正解だったわけですね。
確かに少しとはいえ、生体には負担になってしまう。 でも【魚に興味を持つきっかけを提供できる水族館】というミッションを見つけることができました。
そうなると生体たちも一緒にミッションをこなすようなものでしょう。
やりたくない仕事をやろう!
というわけではなく、もっと大きな目的のために必要かどうか。
「やりたい、やりたくない」みたいな小さいことじゃなくて、大きな目的の有無がポイントとなりますね。
人にフォーカスということ
上記のタッチングプールのアイデアは、なんとお客さんから。
数少ない常連客からの提案だったそうです。
普通はお客さんが少ないとき、普通は少なさでがっかりします。
でも結果を出す人は、これをチャンスにしてしまいます。
少ないからこそとれるコミュニケーションをとるんですよね。
そして今度は稼働している水槽のまわりで、来場者をチェック。
このように「人にフォーカス」する人はまずいません。
普通の人は自分の想像の中で、「たぶんこうだろう・・・」「こうなるはずだ・・・」「こうに違いない・・・」と考えます。
そしてチェックをしません。
でもこの水族館の小林龍二館長は違った。
客の意見を取り入れるには、館内の客を「観察」するしかない。
ここが「アンケート」という言葉じゃなくて、人の行動をみているのがスゴイ!
もちろんアンケートもとるのですが、言葉と行動ではまったく深みが違いますからね。
「何人が立ち止まっていて、何分間ぐらい見てくれたか。一緒に来た人とどんな話をしていたか」を調べているのだ。
とてもシンプルな方法ですね。ただ、時間も手間もかかります。
しかも人数はテンプレート化できますが、話の内容の整理なんて大変な作業でしょう。
手間がかかる、大変、面倒・・・
これをやるかやらないか。
差がつくのってこういうことなんでしょうね。
やるかやらないか?なので、知ったところでやらなきゃ意味ないし、アイデアも実行しなければ可能性話で終わってしまいます。
好きを仕事にするなら
これからは【好き】でないと仕事が勤まらないでしょう。
でも【好き】なだけでもビジネスになりません。
接客は得意じゃない。着ぐるみを着て解説なんてやりたくない。でも、魚だけ見ていてはお客さんからお金をもらえません。
でも【好き】を仕事にするなら、払う側もハッピーになるように考えなくてはいけませんね。
そしてこの館長のすごいところは、給料もアップさせた。
客数が数年前の3倍以上に増え、ゴールデンウィークや夏休みは多忙を極める現在、スタッフの給料は以前より1.5倍近くに上げたと小林さんは明かす。他に、新しい企画などを提案すると金一封をもらえる制度も導入した。
この館長、自分の給料も増えたら、メダカをまた飼いそうですね。
自宅で500匹以上のメダカを飼っている。できればずっとメダカを見つめて暮らしていきたいが、それでは水族館で働く資格はない。魚に興味がない人でも楽しめて、少しでも魚を好きになる場を作ることが自分たちの仕事である。
そしてこのように、給料が増えたら仕事(趣味)に使っちゃうような人じゃないと、プロとして生き残れないのかもしれません。
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